一樹の蔭、一河の流れ

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zoom RSS 甲州市を訪ねて

<<   作成日時 : 2012/05/02 09:02   >>

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4つほど予定があり、大型連休前半は東京で過ごした。そのうちの一日は、初めて山梨県甲府盆地へ足を延ばした。甲府市在住の知人がいて、樋口一葉ゆかりの地をご案内しましょうと、以前から誘われていたのである。当日はお天気も上々。朝10時、新宿発スーパー「あずさ」11号に乗車した。

都心から遠ざかるにつれ、列車は山あいを縫うように走る。高い山ではなく、こんもりと間近に仰ぐ山々には新緑が息づき、山裾や河川敷や民家の庭先には花々が競うように咲き乱れている。起伏と彩りに富んだ車窓を飽くことなく眺めていた。

約1時間半で甲府駅に着いた。知人の車に乗り込みさっそく出発。街路にはハナミズキが咲きほこり、東に向けて走る周辺には桃と葡萄の果樹園が続く。やがて目の前に屏風を立てたように山々が迫る。その中でも一番高い嶺がかの有名な大菩薩峠だという。その高さは2057メートルと地図にあった。

特急列車もない江戸末期。一葉の父母はどんなふうにしてあの大菩薩峠を越えて江戸へ出奔したのか、しかも母は身重の体だったのに。その疑問を知人にぶつけると、ふたりは大菩薩峠を越えたのではなく、静岡に出て東海道を経て江戸へのぼったと。なーるほどと納得、初めて知った。

樋口一葉の父母は、ともに山梨郡中萩原村(現在は甲州市)の出身である。最初に知人が案内してくれたのは、樋口家墓所。そこは樋口家の屋敷があった場所で、大正12年に一葉の妹邦子により墓が建てられたという。周囲を果樹に囲まれた美しい場所だった。
      ※写真をクリックすると拡大します。

           樋口家墓所
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         道路から見た墓所。桃畑に囲まれていた。
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車窓から雄大な大菩薩峠を眺めながら、一葉の父母の出会いの場所となった慈雲寺へ向かった。この境内には樹齢330年といわれるイトザクラ(糸桜)があり、名所になっている。また境内には大正11年に建立された樋口一葉の立派な碑があり、花木に囲まれて静かに佇んでいた。

            慈雲寺山門
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         慈雲寺境内の名物イトザクラ(糸桜)
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           境内の一角にある樋口一葉の碑
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その碑の裏側を見ると、びっしりと人名が並んでいる。賛助人として幸田成行(露伴)はじめ森鴎外、半井冽、馬場孤蝶、三宅龍子、副島八十六など生前交流のあった人々、また与謝野寛・晶子、山川菊枝、平塚明子、相馬御風、鏑木清方等々の文化人、そして親戚と続く。総勢160余名もあった。

           一葉の碑の裏側。著名人の名が並ぶ。
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次に知人が案内してくれたのは、一葉の母の生家だった古屋家。家屋は建て替えられているものの、代々この地で農業を営んでおられるという。広い庭の一角には築山があり、ブドウ畑、周辺には竹林が広がる。しかし何代か前、家が潰れたことがあったという。

          一葉の母の実家の庭に続くぶどう畑
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一葉の遺品がほとんどないのは、そのためだろうという当主のお話だった。いまは元の場所に家が再建されている。一葉の肖像写真、一葉・母・妹の3人揃った写真、一葉の兄虎之助の絵付けした皿2枚、明治45年出版の樋口一葉全集上下二巻、遺品はこれだけしかありませんと、見せていただいた。

          一葉の13回忌に親類に配られた肖像写真
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    一葉の兄・虎之助の描いた皿絵。薩摩焼の絵付けの名手だった。
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20年もかけて一葉のことを調べ評伝を書いたのに、父祖の地を訪問したのは初めてだった。家の格の違いを理由に恋愛結婚を許されなかった一葉の父母は、幕末(1857年)に駆け落ち同然に村を飛び出し、江戸に新天地を求めた。二人は雑用係や乳母となり、夫婦共働きで運を開いていった。江戸で出世したい、その強い願望と度胸と努力が一葉という作家を生む源にあったのだと、大菩薩峠を仰ぎながらしみじみ思ったことだった。

 ♪ 管理者ウェブサイト「杉山武子の文学夢街道」 

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