文化冊子「草茫々通信」15号 ご案内

佐賀発の文化冊子 「草茫々通信」15号(終刊号)が刊行されました。
 2021年11月10日発行 324ページ 700円+税 

特集 人間が戦争をする
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 ※表紙目次に登場する執筆者は何と39名。
  大学教授や研究者、作家、郷土史家、新聞記者などの書くことが本業の人々
  のみならず、大学院生、弁護士、主婦、デザイナー、古書店主など多彩な職
  種・分野の執筆者によって、さまざまな観点から「戦争と人間」の内実に迫
  まり、読み応え十分の内容になっています。

  また「冊子」と称しつつも、これまでの15号のうち、最高の324ページと
  いう単行本に匹敵するページ数となっており、多くの戦争関連の書籍が紹介
  され、写真も豊富で、資料としても十分活用できる内容です。
 「草茫々通信」の発行者・八田千恵子さんが退職後、実に11年間にわたって、
  この冊子の発行・編集に注がれてこられた情熱と熱量に心打たれます。
  
  八田さんの人脈の広さはもちろんのこと、その編集手腕が十分発揮された、
 「終刊号」を飾るにふさわしい密度の濃い内容になっています。
  人類永遠の課題でもある「人間と戦争」について問いかける今号を、多くの
  方に手に取っていただき、ぜひ読んでいただきたく思います。

「草茫々通信」15号表紙
20211110_人間が戦争をする-1.jpg
同上、裏表紙
20211110_人間が戦争をする-3.jpg

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文化冊子「草茫々通信」15号のご購入は、
下記へお申し込みください。1冊700円+税 です。 
 〒849-0922
 佐賀市高木瀬東5-12-6
   八田 千恵子
   電話:0952-31-1608 
 
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忍び寄るもの

M子さんは65歳のとき夫に先立たれてから、自宅マンションでひとり暮らしになった。好きな趣味に打ち込み、お友達とのランチ会など、誰に遠慮することもなく好きなことをして暮らして過ごした。少女時代は戦時中で、隣家に落ちた爆弾の破片で大けがをしたという経験の持ち主でもある。夫亡き後が、M子さんにとって自由な、やっと訪れた青春ならぬ老春だったのかもしれない。

M子さんに異変が現われたのは9年前の85歳の夏。いつも話がかみ合わない。暮れが近づいたある日、1時間おきにおびえた声で電話が掛かって来た。そのつど話を聞いてから、大丈夫よと安心させ、電話を切る。するとまた同様の電話が1日10回くらい掛かる。そんな日が1週間続いた。

何か心配事のトツボにはまり込んだようなので、同じ市内に住む長男夫婦のわたしたちは一計を案じ、年末に1泊2日の旅に連れ出すことにした。幸い知人経営のペンションが空いていたので、車に乗せて現実から引き離して別世界へ。海岸沿いをドライブして植物園を見て、ペンション着。

次の日も何十年も昔に行ったきりという場所などをドライブしたおかげで、表情も明るくなって電話で訴えていた不安はどこかへ飛んだらしく、何とか無事に年越しが出来たのだった。それ以降、M子さんは自分の直前の行動も会話も全然覚えていない短期記憶障害が進んでいった。85歳で記憶装置が止まってしまったのだ。

心配なのでM子さん宅に週に何度もバスで通っていたが、急ぎの時はタクシーで駆け付けたりするうちに、これではわたしの体が持たないと一念発起。8年前にM子さん宅まで歩いて5分で行ける、桜島の見える賃貸マンションに引っ越した。それからは生存確認を兼ねて毎日どころか、1日に2往復することも増えた。

5年前、わたしの世話だけでは限度が来て、地域のケアマネージャーさんを紹介してもらって、ヘルパーさんに昼と夕方に食事の用意や掃除をお願いした。ほかにもデイサービスを利用して介護保険の点数を使い切るので、土日の世話や買い物、洗濯はわたしの担当になった。別に頼まれたわけではないけれど。

91歳までひとり暮らしで頑張ったM子さんだったが、熱中症で倒れ、足腰も弱り、わたしとしては日々心配が絶えないので、コロナ禍の前に施設に入ってもらった。県外にいるM子さんのひとり娘が母親を「引き取らない」と言ったから、これ以上独居は無理と伝えて一緒に住宅型老人ホームを探した。この間、人間は長生きしてもひとりでは生きられない、誰かの世話になるという現実を目の当たりにする日々だった。

施設に入ってくれたもののM子さんは毎月の病院通いのほか、この1年でも2度の入退院、部屋で転倒するたび頭部を打つので、その都度施設から電話で呼び出され、コロナ禍の中、怒涛の如く病院通いが続いた。本人は「ここどこ?」「私、何しに来たの?」とのたまう。ふと気が付けば自分たち夫婦は後期高齢者目前になっている。わたしは元気だけれど、夫は持病持ちでせっせと病院通い。こちらも気になる。

M子さんの世話も来年で10年になる。その間に学んだことは、頭もしっかりして体も動く間に、身辺整理をしておくということだった。M子さんの誰もいない自宅マンションには、大量の服や食器や本などが詰まったまま。もう本人は何も出来ないので、あとの事はひとり娘の仕事になるだろう。(M子さんは夫の継母)

いつの間にか忍び寄っている老い。わたしの亡き母もそうだったが、M子さんも施設に入るとき、自室に持ち込めたのは整理タンスに入る程度の着替えと、洗面用具、夫の遺影、テレビと冷蔵庫、小さなテーブルとイスのみ。実にシンプルだ。わが家にある大量の本や荷物も、来年には半分以下に減らして身軽にしたい。そしてM子さんの世話を卒業して、自分たちの住みたい場所で、あと何年一緒でいられるか分からないが、1日1日を自分たちのために使いたいと思っている。

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虹と桜島 時々の桜島

◆昨日夕方、雨上がりに発生した虹と、最近撮った桜島の写真をどうぞ。

IMG_2465.jpg    11月12日 午後4時17分頃

IMG_2463.jpg         同上

IMG_2461.jpg         同上

IMG_2464.jpg         同上

鹿児島市の繁華街天文館のビルの間から見える桜島は、かなり迫力があります。
IMG_2438 (1).jpg    10月28日 午後1時頃  

2週間前の、日の出間際の桜島。
IMG_0444 (2).jpg    10月29日 6時39分ころ

噴煙雑記 その12

9月某日
コロナ禍が長引き遠出もままならないが、滞在が県内ならよかろうと思って、9月のわたしの誕生日を含む1泊2日の小旅行を計画した。朝早くに鹿児島中央駅から新幹線で八代駅までひとっ飛び。そこで肥薩おれんじ鉄道に乗り換えて、また最初の鹿児島中央駅に向かって戻る、いわばローカル線の旅。

肥薩おれんじ鉄道は九州新幹線の八代=鹿児島中央間の開業に伴って、JR鹿児島本線の八代駅(熊本)と川内駅間が第三セクター鉄道会社に経営移管された路線。かつては特急列車が走っていた線路をのんびりと、海沿いではまるで海上を走っているかのような景観を楽しむことが出来る。

おれんじ鉄道に乗った理由の1つは御朱印帳ならぬ鉄印帳を買ったから。その最初に起点の八代駅のスタンプを押して乗り込み、まず出水に下車。駅周辺を散策して昼食をとり、次に川内で下車。山全体が境内になっている由緒ある新田神社を参拝し、その日は駅前に出来たばかりのホテルに投宿して、ささやかにわたしの誕生日の祝杯をあげた。

10月某日
熊本県にある阿蘇山の中岳が噴火した。桜島を毎日見て暮らしているので噴火には慣れていて、あまり驚かない。というのも桜島は海を隔てた対岸の島にあるからで、そのことが関係している。ところが今回の阿蘇山の噴火で火砕流が一気に麓へ下るのを見て、迫力を通り越して恐怖心が湧いた。自然はあなどれない。

10月某日
8月中旬頃、小笠原諸島の福徳岡ノ場という海底火山が爆発したというニュースがあった。最近は地震も多いので日本列島の火山活動が活発化しているのだろう。それから2カ月ほどたって鹿児島県の奄美大島やその離島の喜界島、与論島、そして沖縄県の海岸に軽石が大量に押し寄せたというニュースが連日届いている。

海底火山から噴出した軽石が東寄りの風に乗って、はるばる南方の島々の海岸に到達したらしい。あのエメラルドグリーンの海と白い砂浜が灰色に覆われている様子は異様だ。漁の船も出せないほどで、やっと観光復活の兆しが見え始めたばかりなのに地元の痛手は相当なものだろう。自然を前に人間は非力だと感じる。

10月某日
2021ショパン国際ピアノショパンコンクールが終わった。今年は3次予選まで進んだ日本人が多かったし、個人的に応援していた反田恭平さんと小林愛実さんが揃ってファイナル(決勝)まで進まれたのは本当に嬉しかった。

ライブで演奏が聴けるとはいえ時差の関係で真夜中になることもあって、ファイナルの審査結果は翌朝になる。今回の結果発表は日本時間で21日朝9時過ぎだった。わたしの中で優勝候補だった反田恭平さん2位、小林愛実さん4位と2人とも入賞され、近年にない大健闘だった。

実力に加えて演奏順や審査員の顔ぶれという「運」も必要といわれるコンクール。ファイナルに残って6位までに入賞すれば、今後の活躍の場が約束されたも同然の世界。とはいえ、さらなる鍛錬が求められるわけで、それに応えられるかどうかは受賞とはまた別の問題になる。

小林愛実さんが3次予選で演奏されたマズルカ4曲とエチュード全24曲は、いつでもYouTubeで聴ける。聴けば聴くほど心に沁みる演奏だと素人ながら思っている。約1時間の魂のこもった演奏は、わたしにとっての最高のBGMになった。
ピアノが好きで時間のある方に、ぜひ聴いてほしい。

  ※小林愛実さん3次予選アーカイブ
  https://www.youtube.com/watch?v=NzDkiXpAbGs&t=1340s

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きょうの桜島 秋日和

9月末からなんと半月にもわたり連日晴天の日が続き、日中の最高温度は32度前後と残暑の厳しさにいささかゲンナリしておりましたが、この3日ほどは曇りがちだったり、最高気温が25度程度まで下がり、やっと秋らしい涼しい風が吹き渡っております。

そんなきょうの桜島をご覧ください。

DSC_1777.JPG      10月19日 午前11時36分 自宅より撮影

DSC_1779.JPG
同上 

DSC_1778.JPG         同上

ショパン国際ピアノコンクール

2020東京オリンピック&パラリンピックは、世界的なコロナ禍のため1年遅れで今年の夏に何とか無事に開催された。わたしが個人的に心配していた会期中の地震や台風直撃などの自然災害は発生せず、よかったと胸をなでおろしたことだった。

続いていま、ポーランドのワルシャワで第18回ショパン国際ピアノコンクールが開催されている。こちらは5年ごとで前回は2015年だったが、今回はコロナで1年延期となり、これを書いている12日は第2次予選の最終日で日本人2名の演奏がある。ちなみにわたしは音楽に関しては、もっぱら聴いて楽しむほう。

クラシック音楽のピアノ曲の中で特にショパンが大好きなので、ショパンコンクールは楽しみにしている。コンクールはまず予備予選があって、それを通過した人だけが本選に進めるが、本選は第1次予選、第2次予選、第3次予選、ファイナルと続く。1回ごとに約半数が落とされ、ファイナルに進めるのは10名程度だ。

2005年の第15回コンクールからインターネットでのライブ配信が始まり、わたしは2015年大会から日本人の演奏をリアルタイムで楽しむようになった。今回から予備予選もライブ配信されるようになり、すぐさまユーチューブにアップされるので、自宅でいつでも視聴できるのが嬉しい。

87名で第1次予選がスタートした今回のコンクールは、2次予選では45名に減り、さらに第3次予選へ進めるのは20名程度だという。ここまでは10月12日夜に書いているが、このあともう1人日本人の演奏が予定されているが深夜なので見ない。そして13日朝には、2次予選通過者が発表されているはず。

さてきょう13日朝、朝食後さっそくパソコンを開き、第2次予選の結果を調べた。全体では45名のうち23人が第3次予選(セミファイナル)に進むと決まっていたが、日本人は何と演奏者8名のうち5名もの名前があってびっくり。

それは、進藤実優さん、反田恭平さん、角田隼斗さん、古海行子さん、小林愛実さん。反田さんと小林さんはすでにプロのピアニストとして国内外で活動中の、演奏会経験豊富な方だ。小林愛実さんは前回2015年にも出場され、日本人として10年ぶりにファイナルまで進まれたが、入賞には至らなかった。

ショパンコンクールに出場できるのは16歳以上30歳以下なので、反田さん小林さんは年齢的に最後のチャンスなので頑張って欲しい。第3次予選は14日から3日間、ファイナル(決勝)は18日から20日まで。ファイナルではオーケストラとの共演があり、聴き比べが出来るので楽しみにしている。

90年の歴史があるといわれるショパン国際ピアノコンクールでは、日本人の優勝者はまだ出ていない。過去の大会の日本人入賞者でわたしが生演奏やCDなどで聴いた事があるピアニストは、中村紘子さん(故人)、内田光子さん、小山美稚恵さん、横山幸雄さんなどで、現在も活躍中の方が多い。

コンクールで使われるピアノはSteinway & Sons(2種類)、YAMAHA、KAWAI、Fazioliの4メーカー5台と決まっていて、演奏者が1台を選ぶ。日本のヤマハとカワイが入っていて、演奏者と共にピアノも映し出されるので何気に嬉しい。ことしはぜひ日本人優勝者が出て欲しいし、入賞者も期待している。

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イグノーベル賞

イグノーベル賞とは、ユーモア系科学雑誌の編集長だったマーク・エイブラハムズによって1991年に創設され、「人々を笑わせ考えさせた業績」に与えられる賞であり、ノーベル賞にちなんだジョークというかパロディーであるという。

ウィキペディによれば、《毎年9月もしくは10月に「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる業績」や風変わりな研究、社会的事件などを起こした10の個人やグループに対し、時には笑いと賞賛を、時には皮肉を込めて授与される。》そうだ。

本家ノーベル賞に劣らずイグノーベル賞もいろいろな分野の研究に対して賞が授与されるが、何と日本人の受賞は2007年以来15年連続という快挙だとか。今年は「歩行者同士が時には、衝突することがある理由を明らかにする実験を実施したことに対して」村上久氏など3名の研究が「運動力学賞」に選ばれている。

1992年から2005年の間にも11の研究が受賞しているから、この賞に対する日本人の貢献度はかなりのものだと思う。それだけ「人々を笑わせ考えさせた業績」が多いことになるが、これまでの日本人の受賞の中から面白いと思った「授賞事由および詳細等」をいくつか紹介したい。(受賞者名は省略)

・1995年(心理学賞)「ハトを訓練してピカソの絵とモネの絵を区別させること
 に成功したことに対して」
・1997年(経済学賞)「「たまごっち」により、数百万人分の労働時間を仮想ペ
 ットの飼育に費やさせたことに対して」

・1999年(化学賞)「夫のパンツに吹きかけることで浮気を発見できるスプレー
「Sチェック」を開発した功績に対して」
・2002年(平和賞)「犬語翻訳機「バウリンガル」の開発によって、ヒトとイヌ
 に平和と調和をもたらした業績に対して」

・2004年(平和賞)「「カラオケを発明し、人々が互いに寛容になる新しい手段
を提供した」業績に対して(歌によって相手に苦痛を与えるためには、自らも
相手の歌による苦痛を耐え忍ばなければならない)
・2005年(栄養学賞)「34年間、自分の食事を写真に撮影し、食べた物が脳の
 働きや体調に与える影響を分析したことに対して」

・2008年(認知科学賞)「単細胞生物の真正粘菌に、パズルを解く能力があった
ことを発見したことに対して」
・2014年(物理学賞)「床に置かれたバナナの皮を、人間が踏んだときの摩擦の
大きさを計測した研究に対して」
・2020年(音響学賞)「ヘリウムガスを使うとワニのうなり声も高くなることを
発見したことに対して」

とまあ、クスっと笑いたくなる研究など、その多種多彩な内容に感心させられる。

特に2008年に認知化学賞を受賞したチームはその後も研究を継続して、うち3名は2010年、「鉄道網など都市のインフラストラクチャー整備を行う際、真正粘菌を用いて、輸送効率に優れた最適なネットワークを設計する研究に対して」で、2度目のイグノーベル賞を授与されている。(真正粘菌とはアメーバ状細胞)

パロディーという位置づけではあるけれども、どれも真面目に研究されたものばかりで、実生活に役立つ研究につながっていると思う。イグノーベル賞はもっと評価され、注目されてもいいのではないだろうか。

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