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zoom RSS ユートピアのあと始末

<<   作成日時 : 2011/07/06 02:33   >>

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昨日は、自分の代理で島原に行ってほしいという母の頼みで、鹿児島から島原へ行き、用事を済ませてとんぼ返り。余裕で日帰りが可能になったが、これは九州新幹線全線開通のおかげである。なにしろ鹿児島・熊本間が最短45分、博多(福岡市)まで最速の「みずほ」だと1時間19分で行ける。九州が感覚的に狭くなった。

5年前のちょうど今頃にも母と一緒に島原へ旅行した。それは母が希望したからで、父の買った別荘地を母が相続し、長年そのままになっているので現地を見たいと言いだしたからである。その旅のことは「島原の夏草」と題して配信している。 http://bronte.at.webry.info/200607/article_1.html

ゴルフ場に隣接する南東向きの山林を不動産会社が造成し、別荘地として売り出したもので、私がその話を初めて聞いたのは高校生の頃。もう40数年前のことになる。業者のパンフレットは、ひな壇状の造成団地に温泉付きの洒落た別荘が立ち並び、花や緑のあふれる桃源郷そのものだった。

父と母が夜な夜な折りたたんだ紙を広げては話し合い、いよいよ買おうと決めた頃、カラー刷りの別荘地鳥瞰図を見せてくれた。「○○ユートピア」の大文字が躍っていたのを覚えている。高度経済成長真っただ中のころで、父の工務店も景気の波に乗っていたから業者に目を付けられたのだろう。

当時の父は働き盛りの50代半ば。真面目で公平で思いやりのあった父の口癖は、「石橋は叩いて渡れ」。それくらい慎重な人だった。しかしご先祖から受け継いだ土地も家業も、やがてそのまま長男に譲るもの。ならば自分の力で自分のための土地を持つのも悪くはないな。

そこに小さな家を建て、老後をのんびり過ごしたいと島原にふと夢を重ねたのかもしれない。ところが造成団地はその後二重売りが発覚し、業者は摘発されるわ、あげくに倒産するわ、すぐ近くで普賢岳噴火による土石流が起きるなど何度もケチが付き、家1軒建つことなく荒れ放題。父も60代半ばにして脳梗塞で倒れ、闘病の末、75歳で亡くなった。

5年前に母と見た現地は夏草と雑木に覆われ、団地全体が原野状態になっていた。もう市に寄付したらと進言したけれど、母は首を縦に振らなかった。その団地の地籍調査を市が行うので、先日説明会が行われたのだ。集まった所有者の大半は県外からで、しかも親から相続したり私のような代理人ばかり。財産価値の無いに等しい土地を、みな持て余しているようだった。

市は最新の測量技術で正確な地籍図を作成するため、隣地の所有者同士立ち合いの上で境界線を決め、杭を打つという。ついては自分の土地の境界線あたりの雑草や雑木の刈り払いをしてほしい、と説明があった。ところが質問続出。何十年も放置状態なので、あったはずの道も境界も分からない状態なのに、どうやって自分の土地の刈り払いができますかと。

別荘地を買ったはずが、いまだに地目山林、現況原野。電気水道ガスもなし。土地代に加え、温泉の権利・工事代として30万余分に払った人も多い。結局、山を切り刻んで儲けたのは業者だけで、倒産だって偽装だったかもしれないと勘繰りたくなる。人の夢を食い物にした悪徳業者だ。

盆明けの立会日には、長袖長ズボン長靴軍手帽子姿で来て下さいと市の担当者。私たちも一緒に草刈りしますが、マムシがいますからと。島原半島で実現するはずだったユートピアも、儚い夢で終わった父。人生最大の判断ミスだったと、あの世できっと悔んでいることだろう。

 ♪ 管理者ウェブサイト「杉山武子の文学夢街道」 

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