一樹の蔭、一河の流れ

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<<   作成日時 : 2008/12/03 00:29   >>

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12月に入り、ウィンタースポーツ・シーズンたけなわ。私の楽しみは何と言ってもフィギュア・スケート。男女とも見て美しいし、音楽と一体となった競技なのも私のお気に入りの理由だ。とりわけ私は、日本の女子選手たちを応援している。つい先週はNHK杯が開催され、選手たちの演技をテレビ生中継で、ハラハラドキドキしながら観戦。幸せな気分に浸れた。

ところで、リンクやリング、あるいは土俵に共通するものがある。リンクといえばスケートリンクのことで、リングはボクシングやプロレスを行なう方形の台。土俵は言わずもがなの相撲を取る円形の場所。リンクで行うスピートスケートやアイスホッケーもあるが、タイムを競ったり団体競技なので、とりあえずおく。

方形や円形の違いこそあれ、私が気にしているリンク・リング・土俵とは、それらの場所で行われるスポーツの共通点として1人(1組)あるいは1対1で試合が行われることにある。プロであれアマチュアであれ選手に共通するのは、全方位360度の観客席から、彼・彼女らに観衆の目が注がれることだ。そこに立ったが最後、選手は逃げも隠れも出来ない。しかも結果を出さないといけない。そこに立たされる自分を想像すると、緊張どころか恐怖で身震いがしそう。誰もが立てる場所ではないと、つくづく思う。

以前、ある知り合いの英国人とスポーツの話になった。彼はフィギュアスケートや体操など、採点して順位を決めるのはスポーツではないと主張するので、体操もフィギュアもれっきとしたスポーツと考える私と、ちょっとした論争になった。(私の初級英語では論争には程遠かったが…)彼は演技や技術の採点にはジャッジの主観が入るので、フェアとはいえないと言い張った。

確かに一理ある。しかしフィギュアスケートなどその競技の性格上、同じリンク内で複数人が同時にプレイすることは不可能。だから一定の規定にのっとり順番にプレイして、採点方式で順位を決めるしかない。ある決まった日時の決まった数分間の本番で、それまでの数ヵ月、数ヵ年の練習成果を出さないといけないのは、他のスポーツ競技と同じだ。

私がフィギュアスケートを好きになったのは、伊藤みどりさんの高く迫力あるジャンプをテレビで見てからだった。ジャンプのうち唯一前を向いて踏み切るアクセルジャンプ。空中で3回転半して着氷するトリプルアクセルジャンプを、公式戦で世界で初めて女子で成功したのが、伊藤みどりさんだった。飛んだという結果より、そこに至るまでの彼女の努力のすさまじさを知ってから、フィギュアスケートに興味を持つようになった。

それまでフィギュアスケートといえば欧米選手が主流だった。そこに女子では無理と言われるトリプルアクセルジャンプを飛んで伊藤みどりさんが割り込み、オリンピックで銀メダリストになり、トリノオリンピックでは荒川静香さんが金メダル。先月から世界各都市で大会が行われたグランプリシリーズ。そのファイナルの女子シングルには、トップ6の出場枠のうち浅田真央、中野友加里、安藤美姫の日本人3選手が出場を決めた。すごいことだと思う。

いまや女子シングルでは、世界トップクラスの選手が続々登場している日本。当然フィギュアスケート本家の欧米関係者は面白くないだろう。日本人選手が活躍するにつれ、規定や採点基準がどんどん厳しくなっているように感じるのは、私のひがみだろうか。もちろんこれは、私個人の思い込みではあるけれど。

フィギュアの新採点方式では、ジャンプの判定に際し踏切りや回転数が厳密に画像でチェックされ、ミスありと判定された場合、また難度の高い技に挑戦して失敗した場合など、容赦なく減点されるようだ。もちろん良い演技には加点もある。ともあれ正確な技が要求されることについては、選手のためになると私は思うが、指摘された欠点を短期間で直せる選手は少ないのではないだろうか。

今年3月世界選手権で優勝した女子シングルの浅田真央選手は、向上心が強く、さらに新しい大技に挑戦している。けれど浅田選手の目指す方向は新採点方式ではリスクが大きく、戦略的には不利に思える。ところが浅田選手の見せてくれる渾身の演技、音楽と一体化した美しい滑りは、何度見ても見飽きない。私は毎日動画で見ては励まされ、元気を貰う。見て受け取る感動と点数は必ずしも一致しないが、私は選手たちの真摯な向上心には、点数のほうがきっと追い付いてくると信じている。

アスリートの中でも選手生命が短いといわれるフィギュアスケート。年若くして世界を目指す少年少女たち。どの選手も怪我無くベストを尽くせるよう、あの過酷な舞台、リンクに咲く花々を、私は心から応援している。

 ♪管理者ウェブサイト「杉山武子の文学夢街道」 

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