一樹の蔭、一河の流れ

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zoom RSS こんなふうに映画を観てきた

<<   作成日時 : 2008/07/09 02:12   >>

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小学1年生の夏休みだったと思う。当時のわが家は祖父母、父母、兄、私を頭に三姉妹、そして父の妹、つまり叔母と9人家族で住んでいた。まだ独身で家から1時間かけて福岡市まで通勤していた叔母さんが、ある日、福岡市で子供向けのとても楽しい映画をやっているから、ぜひ見せたいと、私を映画館につれて行ってくれた。半世紀以上も前のことになるが、そのとき味わったわくわく感は、私を映画好きにした原点になった。

生まれて初めて映画館に行き、大スクリーンで見た映画は、ウォルト・ディズニーの漫画映画「わんわん物語」だった。まだテレビというものがなく、動く画像というものを見たことのなかった私は、映画館の中の暗さや大勢の人に驚き、さらに映画が始まると、その総天然色の美しさ、大きなスクリーン、音楽、動く絵、何もかも驚きばかりだった。いまふり返ればあの映画館で受けたカルチャーショックは、相当なものだった。

田舎のことゆえ、映画館などもちろん身近になかった。その代り農繁期が終わり、収穫を祝う秋祭りの時期になると、神社の境内の2本の杉の木に、紐で結わえて大きなスクリーンが張られ、野天の即席映画館が作られた。日没が近づくと、人々はうちわ片手に集まり、持参したござに座って上映を待つ。そこでは「雪之丞変化」「丹下左膳」など、時代劇を見たことを覚えている。

小学4年生ころになると、一般家庭にテレビが普及してきたが、まだ日本製のドラマはなく、最初はもっぱらアメリカ製の漫画か西部劇ばかり放送された。漫画は「ポパイ」や「トムとジェリー」など、絵も筋も単純で、結末はいつも同じワンパターンなものばかり。「わんわん物語」で受けた感動は、テレビの小さな画面では得られなかった。

小学5年生頃、学校に映画が来ることになった。その日、上級生たちが木造の大きな講堂に集まると、いつも畳まれていた長くて大きな暗幕が引かれ、窓が覆いつくされると、講堂は映画館になった。そこで観たのは「白蛇伝」という、中国の説話を元にした漫画映画だった。待ちに待って見たその動く絵、色の美しさ、音楽、何もかも素晴らしく、それは私には感動というより衝撃だった。

最近知ったところでは、あのとき見た「白蛇伝」は、いまふうにいえば日本初のフルカラー長編アニメーション映画だという。アメリカのディズニー映画に対抗するため、商業化を目指した国産アニメ映画のスタートとなった記念すべき映画で、いまでは世界的に有名な宮崎駿監督は、この「白蛇伝」を観た経験が、のちにアニメ界に入るきっかけになったそうだ。

中学時代に、一度だけ学校に巡回映画が来た。それはずいぶん前から評判になっていた「二十四の瞳」だった。モノクロの悲しい映画で、子供たちの過酷な運命に、涙なしには観られなかった。1987年にリメイク版が上映されたとき観に行ったが、最初に見たほうの印象が強すぎて、その感動を超えるものではなく、少しがっかりだった。

高校生になったのは40数年も前のことで、喫茶店や映画館は生徒だけでは入れなかった。しかし1年生の夏、珍しく父から映画に誘われた。当時父は三船敏郎のファンで、「赤ひげ」を近くの町の映画館に観にいった。妹たちはまだ無理と、長女の私だけ誘ってくれたのが嬉しかった。父と観た最初で最後の印象深い映画だったが、私と同年の二木てるみの好演を、いまでもはっきり覚えている。

大人になってからはもっぱら一人で、ミニシアターや名画座系の映画を好んで観たが、最近は大手シネコンチェーンが旧来の映画館を押しつぶす情勢になっていて、私がいいと思う映画はシネコンでは観ることはできない。日本映画も最近は質より、テレビドラマやコミックや小説で当たったものを無難に映画化する傾向にあり、せっかくいい映画が作られても、上映される場所もチャンスも少ないと、私の知る映画関係者は嘆いている。

最近、全国の映画館を活性化するためのネットワーク「シネマ・シンジケート」が発足したと、ある新聞のコラムにあった。加盟した全国40都市の46映画館が連携して、質の良い映画を選び順次全国で上映するそうだ。シネコンだけになってしまった鹿児島市内でも、上質の映画を独自に観る会が発足して活動を始めた。良い映画に出合うことは、良い友人を得るのと同じくらい素敵なことだから、映画はやっぱり映画館で観ることに私はこだわりたい。

  ※シネコン=シネマコンプレックスの略。
          同一建物内に複数の映画館があり、
          入場券売り場などを1ヵ所に集めた施設。   

 ♪管理者ウェブサイト「杉山武子の文学夢街道」     

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