|
◆NHKのテレビ番組に、毎朝放送される連続ドラマがある。朝ドラと言うらしいが、私はずっと勤めをしていたこともあり、あまり見る機会はなかった。私の記憶では「うず潮」は中学生のときだったし、「おはなはん」や「旅路」は高校生のとき。当時はまだ週休二日制ではなく土曜日は半ドン。朝の放送時間にはもう学校にいたから、「おしん」など評判になったものも見たことはなかった。 その後、衛星放送が始まり朝7時半から朝ドラが放送されるようになったので、支度をして出勤間際に見ることが可能になり、'96年の「ふたりっ子」や '97年の「あぐり」などは、割と熱中して欠かさず見ていた。専業主婦になってからは朝食の時間と重なる7時半からBS放送で見ているが、印象に残っているのは「すずらん」「ちゅらさん」「さくら」など。 勤めと同時に子育てもあったので、元々私にはテレビを見るという習慣があまりなかった。というよりテレビを見る時間が取れなかった。それまで私は、ドラマといえば演劇や芝居のことを指すと思っていたら、マスコミでは映画や舞台劇と区別するためか、単にドラマという場合、テレビドラマを指していることに最近になって気がついた。 朝ドラには限らないが、テレビドラマには、必ずといってよいほど冒頭や途中や最後にナレーションが加わる。物語の背景や前回までのストーリーを説明するために、登場人物の声やアナウンサーなどが解説的な言葉を加える。どうやらナレーションはドラマづくりには欠かせない手法のようだ。けれど私はこの数年朝ドラを見ていて、毎度ナレーションが気になって、というより耳触りでしかたがない。 前回の朝ドラ「どんと晴れ」のナレーションも、方言のイントネーションが強すぎて最後までなじめなかった。現在放送中の「ちりとてちん」は、大人になった主人公が若いころを振り返って自分の人生を語るという設定で、ナレーションが入る。今回もヒロインの両親役や重要な脇役はベテラン俳優さんが固め、ドラマのすべり出しも良く、ひいきの俳優さんの自然な演技を楽しみに毎朝見ている。 ところがナレーションが気になってしかたがない。現在の朝ドラは、ヒロインとは違う声の主がヒロインになりかわって一人称で語るが、私にはどうしても違和感がつきまとう。大阪弁なのはいいとしても、「〜ですなぁ」という男言葉?も変だし、時々突っ込みが入ると、せっかく盛り上がった私の気分はぶち壊し。「黙っててよ!」とこっちが突っ込み入れたくなる。 せっかく俳優さんが悲しそうな表情をにじませているのに、おっかぶせるように「…悲しかったのでした」のようなナレーションが入ると、見ていてムッとする。こっちは想像力をかき立て、この先どうなることやらと感情移入しているのに、ヒロインの気持や感情や先のことまでナレーションで説明してしまう。演じている俳優さんにも視聴者にも、とても失礼な、よけいなお世話ではないだろうか。 先月の「鎌倉文士鹿児島で語る」という講演会でも、ナレーションが話題になったことは以前のエッセイでも触れた。柳美里さんは「ナレーションてつまんない。ナレーションは読むしかない。ナレーションの消えた小説を書きたい。ナレーション的な文章にならないよう格闘している。」と発言されたが、共感できる。なぜならナレーションとは説明だから、そんな羅列の小説は読んでも読者の心に響くはずもなく、つまらないからだ。 テレビドラマは子供からお年寄りまで、幅広い年齢層が見るということを想定して、分かりやすさを優先させているのかもしれない。また視聴率を上げるために話題性のあるスターを登場させたり、逆に忙しい俳優さんをひっこめるために突然死なせたりする不自然さにも慣れてきたが、白ける。朝ドラの人気がだんだん低下している原因は、そんなご都合主義でドラマが作られることと無関係ではないように思う。 文章で勝負する小説家の命が説明ではなく描写力だとしたら、俳優さんの命は演技とは思わせない演技力だろう。ノンフィクション作品やドキュメント番組ならともかく、創作の場合、安易に使われるナレーションが内容を損ないマイナスに作用するのは、小説でもドラマでも共通して言えるのではないだろうか。 いくら万人向けの朝ドラとはいえ、俳優さんは真剣勝負で演じているだろうし、見るほうも良質のものとそうでないものを見分ける目は持っていると思う。ナレーションで演技の補足説明をするのは、屋上屋を架すのも同じ。脚本家も演出家もナレーションでごまかさず、魅力的なシナリオと俳優さんの演技力を前面に、本格的なドラマ作りを目指してほしい。 ♪管理者ウェブサイト「杉山武子の文学夢街道」 |
| << 前記事(2007/10/31) | トップへ | 後記事(2007/11/14)>> |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
300回おめでとうございます。いろいろなテーマを日常の視点から取り上げて語っておられるのに共感し、毎週読むのを楽しみにしています。一本筋の通った姿勢も魅力。これからもお元気で書き続けられますよう願っております。 |
bon 2007/11/07 11:21 |
bonさま。メルマガのご感想ありがとうございました。 |
takeko URL 2007/11/07 15:26 |
| << 前記事(2007/10/31) | トップへ | 後記事(2007/11/14)>> |